ツール・ド・九州2019 in 唐津

開催日時:4月12日(金)〜14日(日)
開催場所:佐賀県唐津市
スペシャルステージ本数:14本
スペシャルステージ総距離: 74.91km
ラリー総距離: 335.82km
SS路面:ターマック
SS路面状況:ドライ/ウエット
ポイント係数:1.0

全日本ラリー選手権第3戦「ツール・ド・九州2019 in 唐津」はすべての競技日程を終えて、三菱ランサーエボリューションⅩを駆る奴田原文雄/佐藤忠宜が今シーズン初勝利を挙げた。2位には最終SSでポジションをひとつ上げた新井敏弘/田中直哉、3位は勝田範彦/石田裕一というトップ3となった。

レグ1

戦いの舞台となるのは唐津市南部のワインディングロード。この日行われたのは8SSで、ギャラリーステージのUCHIURA(SS5/6)が新設ステージとなる。ラリーは唐津神社での安全祈願を経て、鳥居をくぐってのセレモニアルスタートで開幕。JN1クラスでオープニングのSS1から速さを見せたのは、昨年も勝利を挙げている奴田原だった。9.83kmのステージでいきなり5.4秒のリードを築き、その後も快走を維持。後を追うスバル勢も食らいつくものの、その差を詰めることは叶わず、この日のSSはすべて奴田原が手中に収める結果となった。首位奴田原と2番手勝田の差は23.2秒とやや開いており、その後ろでスバル勢が競り合う結果となっている。

トップの奴田原は「たまにはこういうことがあってもいいですよね(笑)。おそらく、ライバルがタイヤに問題があったり、足まわりがうまくいっていないなか、僕らは何事もなく普通に走れたのが良かったと思います。クルマもバランス良く仕上がっていました。なかなか難しい1日でしたが20秒以上のアドバンテージは自分でも驚きました。日頃の行いが良かったからかな(笑)。明日も大切に走りたいと思います」と上機嫌でコメント。1年ぶりの勝利に向けて士気は高い。

JN2クラスのトップは眞貝知志/安藤裕一(TGR Vitz GRMN Rally)。2番手の石井宏尚/明治慎太郎(レクサスRC F)を1分以上引き離してリードを固めている。石井の背後1.7秒差は上原淳/漆戸あゆみ(ホンダ・シビック・タイプRユーロ)が続き、シトロエンDS3 R3-MAXの山村孝之/井沢幹昌が4番手となっている。眞貝は「クラストップに立つことはできましたが、なかなか厳しいですね。路面は綺麗で唐津らしい、思い切って走れる状況でした。新しいステージはもっと距離があるといいんですけどね。今回から使っているKYBの足まわりは、基本的な出来がよく、レベルの高い細かい調整ができています。明日もこのままのポジションをしっかり守って走ります」とコメント。2番手の石井は「サービスで減衰を調整して、タイヤを硬い方のコンパウンドに変えたらすごく走りやすくなりました。明日はこの順位をキープしたいんですが、上原選手はベテランなので、まずは完走を目指します」と、最終日への意気込みを語っている。

トヨタ86同士の接戦が繰り広げられているJN3クラスは3度のベストタイムをマークした山口清司/竹原静香がトップ。2.1秒差の2番手には山本悠太/山本磨美、少し間があいて37秒差の3番手に長﨑雅志/秋田典昭というトップ3だ。山口は「だいぶ山本選手に詰め寄られましたが、なんとか逃げることができました。トラブルもなかったですし、タイヤの摩耗状態も悪くないので、順調です。明日も気が抜けないので、しっかり最終サービスでメンテナンスして頑張ります」と笑顔でコメント。5度のベストタイムをマークして山口を追いかける山本は「緊張感があって、疲れました。ちょっとのミスも許されない状況でしたが、ミスなく走れました。明日は天気がどうなるか、それによってタイヤやセッティングも変わってくるので、次のサービスで考えます」と、この日の戦いを振り返った。

スズキ・スイフトスポーツ4台が争うJN4クラスは、トップに高橋悟志/加藤昭文、2番手に西川真太郎/本橋貴司、3番手には黒原康仁/美野友紀、4番手に関根正人/草加浩平という順位。新城に次いで好調を維持する高橋が6SSでベストタイムをマークする強さを見せて大きくリードを広げている。高橋は「結果的に、だいぶタイム差が広がって良かったです。一番大きかったのはタイヤだと思います。このクラスは全員が違うタイヤを装着していて、僕のタイヤチョイスで一気に逃げ切れました。明日はこのままのペースで逃げ切りたいと思います」とコメント。翌日に向けて意気込みを見せた。

JN5クラスは天野智之/井上裕紀子(トヨタ・ヴィッツGR)が安定の全SSベストタイムをマークして盤石のリードを築き上げている。2番手につけているのは今回からクロスミッションを投入したマツダ・デミオの岡田孝一/廣田幸子。3番手にはホンダ・フィットRSの小川剛/藤田めぐみというオーダーになっている.トップの天野は「午前中はタイヤ的にはかなり厳しかったので、午後はタイヤをもたせる方向の走り方にし、2ループ目は摩耗の問題もありませんでした。今日は全ステージベストを獲れましたが、新しいステージでは、思った以上にタイム差がつけられなかったので、しっかり走りたいと思います」とコメントしている。

トヨタ・ヴィッツCVTの大倉聡/豊田耕司がリードを築いているJN6クラス。大倉も全SSベストタイムという強さを見せて大量のマージンを得ており、2日目に向けても万全の体制だ。2番手には同じくトヨタ・ヴィッツCVTの板倉麻美/蔭山恵、3番手には日産ノートe-POWER NISMO Sの伊藤隆晃/大高徹也という順位となっている。トップの大倉は「あまりフルアタックはしていないんですが、順調に攻めています。もう少し行けるかと思ったのですが、タイムが伸びずに、自分としてはドライビングにあまり満足していません。それでも道がいいので、楽しく走れました。タイヤの磨耗が多少厳しい局面はありましたが、明日もし雨が降っても大丈夫なマージンは確保できたと思っています」とコメント、最終日を視野に入れた戦い方をしていることを明らかにした。

レグ2

この日はSS9〜SS14の計6SSが戦いの舞台。前日にも使われたSANPOUの逆走SS「SANPOU REVERSE」(SS11/14)は距離が9.86kmあり、勝負どころと目された。サービスの置かれる「ボートレースからつ駐車場」に隣接して設けられたギャラリーSS「BOAT RACE」からラリーはスタート。各車ともサービスを出るタイミングで暖機運転をする独特の雰囲気で最終日の幕が開いた。

前日すべてのSSでベストタイムをたたき出した奴田原がリードするJN1クラスは、4番手につける鎌田卓麻/鈴木裕がオープニングステージで意地のベストタイム。SS11「SANPOU REVERSE」では勝田もベストタイムをマークして奴田原を追うが、奴田原もマージンを活かしてつけ入る隙を与えない。残り2SSとなった時点で雨が降り始めたものの、奴田原は崩れることなくライバルとの差を広げフィニッシュ。奴田原にとっては昨年の唐津以来1年ぶりの優勝となる。2位は新井。雨の最終SSで勝田のタイムを15.8秒上まわり、ポジションをひとつ上げることに成功した。

奴田原は「雨が降ってきた時は、どうなるかと思いましたが(笑)、無事にフィニッシュできてよかったです。SS13からはウエット路面でした。初日にしっかり貯金できたことが大きかったですね。勝因はタイヤだったと思います。ドライはもちろんですが、ウエットになってからも余裕を持って走ることができました」と笑顔でコメント。2位の新井は「今回は出だしでクルマのセッティングが間違っていましたが、どこが悪いかは分かっています。次の久万高原は頑張ります」とコメント。次戦に向けての意気込みを語った。

JN2クラスは初日に続いてすべてのSSでベストタイムを刻む安定の戦いぶりを見せた眞貝知志/安藤裕一(TGR Vitz GRMN Rally)が今季早くも3勝目。2位にはホンダ・シビック・タイプRユーロの上原淳/漆戸あゆみ、3位にはレクサスRC Fの石井宏尚/明治慎太郎というオーダーとなった。今回からKYBのサスペンションを投入した眞貝は「課題はいくつか見つかっていますが、JN2クラスにおいける戦いに関しては、いい流れだと思います。今回はウエットコンディションにもなりましたが、足まわりは少し調整しただけでいい方向に変わってくれました」と、ラリーを振り返っている。

トヨタ86が接戦を繰り広げるJN3クラスは山本悠太/山本磨美が今季初勝利。2位にはリードを守り切れなかった山口清司/竹原静香、3位には長﨑雅志/秋田典昭が入っている。初日を終えた段階で山口の2.1秒リードで始まったバトルは、山本がスタートから4連続ベストタイムを刻む好走。SS11を終えた段階で山口をとらえ、最終SSでは一気に5.8秒差をつける一番時計で接戦を制してみせた。山本は「最後のセクションで雨が降ってきて、どうなるかと思いました。それでも山口選手とドライタイヤで同じ条件だったので、なんとかしのぐことができて良かったです。天候が原因で勝負が動くと思っていたので、その勝負で勝てて良かったです」と喜びを語った。

JN4クラスはスズキ・スイフトスポーツの4台が参戦。前日に大きくリードを築いていた高橋悟志/加藤昭文はSS10でスピンを喫するもなんとか逃げ切り、前戦に続いて勝利を飾っている。2位には地元の黒原康仁/美野友紀、3位には関根正人/草加浩平が入った。高橋はラリー後、「今朝の2本目からエンジンの調子が悪くなってしまいました。それ以降は良くなったり、悪くなったりでした。タイムも遅れましたし、すごくフラストレーションが溜まりました。なんとか持ちこたえられて良かったです。課題も見えたので、対策して挑みます」と明かしている。

天野智之/井上裕紀子(トヨタ・ヴィッツGR)が今季3勝目を挙げたJN5クラス。ホンダ・フィットRSの小川剛/藤田めぐみが2日目にペースを上げ2位に入り、3位にマツダ・デミオの岡田孝一/廣田幸子という順位となった。この日は小川が4SSでベストタイムを刻む好走を見せたが、天野は長いSSをキッチリと獲ってリードを拡大し勝利を収めている。天野は「最終日は小川選手が速かったですね。HAKOBAとショートステージでベストを獲られてしまいました。フィットがかなり速いので、今年はかなり面白いシーズンになりそうです」と貫録のコメント。

JN6クラスは初日の段階でクラス2番手に2分以上の大差をつけた大倉聡/豊田耕司が危なげなくシーズン3勝目をゲット。2位には板倉麻美/蔭山恵が入り、前戦に続いてトヨタ・ヴィッツCVT勢が上位を占めた。3位には伊藤隆晃/大高徹也(PD YHノートe-POWERニスモS)。盤石のマージンを活かしてラリーを走り切った大倉は「3連勝できて良かったです。後ろとの差が開いていたので、思い切りペースを落としてウエットを走りました。ドライの時はクルマのバランスが良かったのですが、とんがったセッティングだったので、ウエットは少し乗りにくかったです。今回から新しく入れたアイテムが機能してくれました。次からも新しいアイテムが入るので、すごく楽しみです」と次戦に向けて笑顔を見せた。

次戦は5月3日〜5日に開催される第4戦Sammy久万高原ラリー。昨年までのグラベルからターマックへとコースが変更され、どのような戦いとなるか各クラスの状況に注目したいところだ。

(RALLY PLUS)

総合結果

順位 クラス ドライバー/コ・ドライバー 車名 タイム
1 JN1-1 奴田原文雄/佐藤忠宜 ADVAN-PIAAランサー 1:03:18.8
2 JN1-2 新井敏弘/田中直哉 富士スバル AMS WRX STI 1:03:54.0
3 JN1-3 勝田範彦/石田裕一 ラック STI 名古屋スバル DL WRX 1:04:01.6
7 JN3-1 山本悠太/山本磨美 Sammy☆K-one☆ルブロスYH86 1:06:21.5
10 JN5-1 天野智之/井上裕紀子 豊田自動織機・DL・ヴィッツ 1:07:16.0
11 JN4-1 高橋悟志/加藤昭文 ミツバitzzDLマジカル冷機スイフト 1:07:30.6
12 JN2-1 眞貝知志/安藤裕一 TOYOTA Vitz GRMN Rally 1:07:39.3
18 JN6-1 大倉聡/豊田耕司 アイシンAW Vitz CVT 1:08:26.2

注)クラス区分については全日本ラリー選手権ガイダンスをご覧ください。

参考総合結果表: リザルト(PDF) リザルト(Excel)

ご注意:ここに掲載の本レポートおよび結果表等はJRCA/RALLY PLUSが独自に取材、入手したものでJAF公式発表のものではありません。従ってJRCA以外から発表されるそれらのものと若干異なる場合や誤りのある場合もありますので、あらかじめご了承のうえ参考資料としてご覧ください。

ダイジェスト動画

2019年 全日本ラリー選手権 第3戦 唐津・佐賀

イベントフォト

JN1クラス優勝 奴田原文雄/佐藤忠宜

JN2クラス優勝 眞貝知志/安藤裕一

JN3クラス優勝 山本悠太/山本磨美

JN4クラス優勝 高橋悟志/加藤昭文

JN5クラス優勝 天野智之/井上裕紀⼦

JN6クラス優勝 大倉聡/豊田耕司