久万高原ラリー

開催日時:5月3日(金)〜5日(日)
開催場所:愛媛県久万高原町
スペシャルステージ本数:8本
スペシャルステージ総距離: 109.96km
ラリー総距離: 269.71km
SS路面:ターマック
SS路面状況:セミウエット/ドライ
ポイント係数:1.2

全日本ラリー選手権第4戦Sammy久万高原ラリーはすべての競技を終え、ベテラン勢を従えてスバルWRX STIの新井大輝/小坂典嵩がJN1クラスの優勝を飾った。2位には奴田原文雄/佐藤忠宜(三菱ランサーエボリューション)、3位に勝田範彦/石田裕一(スバルWRX STI)という順位となった。

レグ1

ラリーは久万高原町役場のセレモニアルスタートで幕を開け、選手たちは4SS、54.90kmのステージへと次々にスタートしていった。JN1クラスでSS1ベストタイムをマークしたのはGRB型で参戦する新井大輝。SS2番手の奴田原に5.2秒差をつけ機先を制することに成功した。SS2は奴田原が反撃し一番時計。ここで新井大輝はトランスミッションオイルが漏れてしまうトラブルに見舞われながらも、総合2番手の座を維持してサービスへと戻ってきた。午後のSS3、トラブルを修復した新井大輝はベストタイムをマークして首位奪回に成功。そこで得たリードを活かして、奴田原がベストを獲ったSS4でも首位を守り切り、最終的に奴田原に対して1.2秒の差をつけるトップで初日を終えた。鎌田卓麻はSS1で足まわりを破損、新井敏弘はSS3でコースアウトを喫し、それぞれリタイアするという波乱の展開となっている。

初日をトップで終えた新井大輝は「とりあえずミッションオイル漏れは前のサービスで直しました。本当にミッションブローしなくてよかったです。それはホッとしています。明日もありますし、タイヤも温存しています。今日は後方で路肩のグラベルが掻き出された状態で走るのが嫌だったので、最終日の先頭でスタートを獲得できて良かったです。ターゲットを持って走り、それが遂行できたと思います。1.2秒差ですし、油断はできません」とコメントしている。

JN2クラスのトップはトヨタ・ヴィッツGRMNの眞貝知志/安藤裕一。2番手にはレクサスRC Fの石井宏尚/寺田昌弘、3番手にはシトロエンDS3 R3-MAXの山村孝之/マクリン大地が入っている。今回のラリーで幅の広いタイヤを投入した眞貝は慎重に走りつつも、この日の4SSすべてでベストタイムを刻む高い安定感を見せてリードを広げ、1分以上のアドバンテージを築いている。眞貝は「タイヤはすごく良くなっていますが、なかなか自分の限界を上げていけない、難しい状況です。クルマを壊しては元も子もないので、このままのペースを守っていきます」と、この日の走りについて語っている。

トヨタ86同士の戦いとなっているJN3クラスは、セットアップに悩みながらもSS2から3連続ベストタイムの山口清司/島津雅彦が一歩リード。SS1でベストタイムをマークした山本悠太/山本磨美はパンクを喫して後退、2番手の曽根崇仁/木村裕介と3番手の長﨑雅志/秋田典昭が1秒差で競り合う展開となっている。山口は「なかなか大変な感じでした。サービス後にアライメントを変えたりして、SS4はようやくいい感じで走れるようになりました。このポジションをキープして、明日も走り切りたいです」とコメント。

スズキ・スイフトスポーツ勢が上位を占めるJN4クラスは、高橋悟志/古川智崇が首位、24.7秒差で関根正人/草加浩平が追う展開。3番手には西川真太郎/本橋貴司、4番手にはホンダ・シビック・タイプRの香川秀樹/松浦俊朗がつけている。高橋はブレーキが厳しいなか好走を披露、この日の4SS中3SSを制するスピードを見せた。最終日に向けて高橋は、「ラリー序盤はブレーキが保たなかったですが、なんとか対策を施してうまくいったと思います。午後もいいペースで走ることができました。明日も心機一転頑張ります」と語っている。

JN5クラスは天野智之/井上裕紀子(トヨタ・ヴィッツGR)が全SSベストタイムで盤石のリード。2番手にはマツダ・デミオの岡田孝一/石田一輝、3番手には小川剛/藤田めぐみ(ホンダ・フィットRS)が入っている。天野は「サービスでダンパーを調整して、午前中よりも午後の方が走りやすくなりました。明日は今日の逆走になりますが、ヒルクライムのが比率が高くなるので、総合順位的には厳しいかもしれません。クラストップと、前回取り損ねたSammy賞を狙います」と力強くコメント。2番手につけた岡田は前戦から待望のクロスミッションを投入。「順調ですね。マシンの調子は問題ありません。SS3はかなり攻めたので、天野選手との差が縮まりましたが、SS4は荒く攻めすぎて、タイムロスしてしまいました。ブレーキに関しては、左足ブレーキ厳禁で保たせました(笑)」とこの日の走りを振り返った。

JN6クラスは大倉聡/豊田耕司、板倉麻美/梅本まどかのトヨタ・ヴィッツCVTが1-2番手。3番手には中西昌人/福井林賢(マツダRX8)がつけている。大倉はすべてのSSでベストタイムを刻むも、「SS1が難しくて、ちょっと足まわりにダメージを負いました。サービスでセッティングを変えて、最後のループはだいぶ良くなりましたね。リヤの足回りは最後のサービスでどうにかなるか……ですね。このまま行ってもいいのかもしれません。リバースは難しいので、集中して最後まで走り切りたいと思います」とコメントしている。また、プレイドライブ・ラリーチームの伊藤隆晃/大高徹也(日産ノートe-POWER NISMO S)は5番手という状況だ。

レグ2

ラリー最終日は前日のSSを逆走して使う4SS、55.06km。前日はマシン特性もあり新井大輝と奴田原がベストを獲りあう展開となったが、この日は新井大輝がオープニングのSS5から3連続ベストタイムをマークして奴田原を圧倒した。最終SSではリスクを避けて危なげなくラリーをまとめる巧さを発揮し、最終的に10.1秒差で勝利。海外修行での確実な、そして大きな成長を感じさせる一戦となった。

新井大輝は「無事に優勝できました。SS2ではトランスミッションオイルが漏れるという問題もありましたが、それ以外は自分の計画どおりのラリー運びができました。すべてがうまくいったと思います。今日の1本目のSS5の下りは本当に死ぬ気で踏みました。2ループ目までに大差をつけることが目標だったので。最後のループはクルージングして帰ってこられました」と、余裕さえ感じさせるコメントでラリーを振り返っている。

JN2クラスはTGR Vitz GRMN Rallyの眞貝知志/安藤裕一が盤石のシーズン4連勝。2位にはレクサスRC Fの石井宏尚/寺田昌弘、3位はシトロエンDS3 R3-MAXの山村孝之/マクリン大地という順位になっている。8SS中6SSを制した眞貝は、セッティングには改善の余地があるとしつつも「きっちりミスなく、4連勝できて良かったです。今回から導入したタイヤは抜群に良く、このラリーでも助けてもらいました。グラベルを前にシリーズの貯金ができて挑めるのは大きいです」と前向きなコメントを残している。

曽根崇仁と長﨑雅志による僅差の2位争いに注目が集まったJN3クラス。首位は初日から大きくリードを稼いだ山口清司/島津雅彦(トヨタ86)が危なげなくフィニッシュまでマシンを運び、勝利を挙げた。2位争いは、最終SSを前に1.3秒曽根がリードというスクラッチバトルに。曽根は最終SSで長﨑を突き放す渾身のベストタイムをマークして2位。長﨑は3位となっている。地元愛媛県出身の山口は、「ここで勝つのは2016年以来です。今シーズンようやく勝てましたね。今回はクルマがあまりうまく仕上がっていなかったのですが、修正しながら走り切ることができました。島津選手とのコンビは2年ぶりですが、違和感なく戦うことができたと思います。モントレーに向けて、しっかりクルマを直して臨みます」と、ラリーを振り返った。

JN4クラスは高橋悟志/古川智崇(スズキ・スイフトスポーツ)が初日のリードを活かして勝利を獲得。2位には関根正人/草加浩平(スズキ・スイフトスポーツ)、3位は西川真太郎/本橋貴司(スズキ・スイフトスポーツ)となっている。今季3勝目と好調の続く高橋は、「連勝できてうれしいです。今回はタイヤとブレーキの使い方が大きなポイントとなりました。下りが厳しかったのですが、ダンロップが幅の広いタイヤを出してくれていたことと、ブレーキも含めていい感触でした。モントレーはグラベルになるので、心機一転あらためて頑張ります」と勝因を語った。

天野智之/井上裕紀子(トヨタ・ヴィッツGR)が全SSベストタイムで負けなしの4連勝を飾ったJN5クラス。2位は岡田孝一/石田一輝(マツダ・デミオ15MB)、3位には小川剛/藤田めぐみ(ホンダ・フィットRS)という順位となった。昨シーズンから数えて6連勝という強さを誇る天野は、「一応、今回で61勝目になります。クラスではベストタイムを並べることができたのですが、気温・標高が高いので1.5リッターのNA車にとっては厳しいですね。次戦はグラベルラリーになりますが、上のクラスを食える機会も増えてくるので、より楽しんで走ることができると思います」と貫録のコメントで、次戦に向けた意気込みを語った。

JN6クラスは大倉聡/豊田耕司(トヨタ・ヴィッツCVT)が、こちらも負けなしの4連勝。2位には板倉麻美/梅本まどか(トヨタ・ヴィッツCVT)、3位は中西昌人/福井林賢(マツダRX8)が入っている。大倉は初日に負ったダメージを修復し、様子をみながらの出足。それでもベストタイムを積み重ね、8SS中7SSを制してみせた。大倉は、「昨日ヒットしたリヤセクションを直してもらったんですが、今日の最初はクルマの様子を見ながら走りました。マシンを直してくれたチームに感謝です。最後のSSでは板倉選手にベストタイムを取られてしまいました。もう1kmあたり1秒の差はないも同然ということで警戒しています。次は久々のグラベルなので、楽しみです」とラリーを振り返った。また、プレイドライブ・ラリーチームの伊藤隆晃/大高徹也(日産ノートe-POWER NISMO S)は4位でラリーを終えている。

次戦は6月6〜9日、群馬県嬬恋村で開催されるMONTRE 2019。今年は日本スーパーラリーシリーズだけでなく、アジア・パシフィックラリー選手権との併催となり、走行距離も長くなっている。グラベル連戦の緒戦ということで、その後のシーズンを占ううえでも重要なラリーと言えるだろう。

(RALLY PLUS)

総合結果

順位 クラス ドライバー/コ・ドライバー 車名 タイム
1 JN1-1 新井大輝/小坂典嵩 ADVAN KYB AMS WRX 1:27:49.5
2 JN1-2 奴田原文雄/佐藤忠宜 ADVAN-PIAAランサー 1:27:59.6
3 JN1-3 勝田範彦/石田裕一 ラック STI 名古屋スバル DL WRX 1:28:38.3
5 JN4-1 高橋悟志/古川智崇 ミツバitzzDLマジカル冷機スイフト 1:32:30.8
7 JN3-1 山口清司/島津雅彦 Sammy☆K-one☆ルブロスYH86 1:33:24.1
8 JN2-1 眞貝知志/安藤裕一 TOYOTA Vitz GRMN Rally 1:33:41.2
12 JN5-1 天野智之/井上裕紀子 豊田自動織機・DL・ヴィッツ 1:34:35.0
19 JN6-1 大倉聡/豊田耕司 アイシンAW Vitz CVT 1:36:59.6

注)クラス区分については全日本ラリー選手権ガイダンスをご覧ください。

参考総合結果表: リザルト(PDF) リザルト(Excel)

ご注意:ここに掲載の本レポートおよび結果表等はJRCA/RALLY PLUSが独自に取材、入手したものでJAF公式発表のものではありません。従ってJRCA以外から発表されるそれらのものと若干異なる場合や誤りのある場合もありますので、あらかじめご了承のうえ参考資料としてご覧ください。

ダイジェスト動画

2019年 全日本ラリー選手権 第4戦 久万高原・愛媛

イベントフォト

JN1クラス優勝 新井大輝/小坂典嵩

JN2クラス優勝 眞貝知志/安藤裕一

JN3クラス優勝 山口清司/島津雅彦

JN4クラス優勝 高橋悟志/古川智崇

JN5クラス優勝 天野智之/井上裕紀⼦

JN6クラス優勝 大倉聡/豊田耕司