NISSIN ラリー丹後2020
開催日時:7月31日(金)〜8月2日(日)
開催場所:京都府京丹後市
スペシャルステージ本数:10本
スペシャルステージ総距離:114.77km
ラリー総距離:315.91km
SS路面:ターマック
SS路面状況:ドライ
ポイント係数:1.2
全日本ラリー選手権第5戦ラリー丹後は8月2日(日)にすべての競技を終了し、JN1クラスはスバルWRX STIの鎌田卓麻/鈴木裕が勝利を収めた。2位には三菱ランサーエボリューションの奴田原文雄/佐藤忠宜、3位にスバルWRX STIの新井大輝/小坂典嵩が入った。
レグ1
ラリーの舞台は丹後半島の東側に位置する丹後縦貫林道。初日は計6SS、67.53kmで争われる。SS1/3/5のTsunotsuki(9.32km)、SS2/4/6のNariai(13.19km)ふたつのSSを午前中に2回、午後に1回走行する構成だ。レッキの段階で汚れていた路面は走行を重ねるごとに状況が好転。濡れていた箇所も高い気温によって徐々に乾いていった。
JN1クラスで丁々発止の好バトルを繰り広げたのは鎌田と奴田原。6SSのうちSS1/3/5を鎌田が獲り、SS2/4/6を奴田原が制するという、両者一歩も譲らぬ展開となった。新たなマシンを製作して臨んだ鎌田はSS2でタイムロスを喫したものの、その後挽回し、最終的に鎌田が4.7秒のリードを築くことに成功した。
鎌田は「SS2で少しロスをしてしまって、奴田原選手にやられてしまいましたが、その後はいいペースで走ることができています。僕の得意なSSと奴田原選手の得意なSSで、一進一退になりました。接戦ですが、少しずつ離しているのでこのままいきたいですね」とコメント。一方の奴田原は「Tsunotsukiが何回走っても、どうしても敵わないんですよね。これ以上は上げようがない。明日はどうするか、作戦を考えてみます」と、初日を振り返った。
6台がエントリーしたJN2クラスは上原淳/漆戸あゆみ(ホンダ・シビック・タイプRユーロ)がトップ。上原はターマックでのテストを重ね、ドライビングに手応えを得たとスタート前に語っていたが、その効果を遺憾なく発揮したかたちだ。2番手にレクサスRC Fの石井宏尚/寺田昌弘、3番手にトヨタ・ヴィッツGRMNの眞貝知志/安藤裕一を従え、2日目に挑む。
上原は、「レッキの時は道が荒れていましたが、今日は走りやすいです。リヤタイヤが思ったより厳しいので、4つのタイヤを使えているということですかね。今日はタイヤを6本使って、明日はフロント2本をリヤにまわし、前に新品2本を入れるつもりです。上りは石井選手の方が速いので下りで勝負かな」と翌日に向けてのプランを語る。後を追う石井は、「クルマとコースが合っているみたいなので、アクセルを踏んで曲げることができています。フロントにも負担をかけずに、今のところ走れていますね。明日は上りが多いので、パワーを活かして走ります」と意気込みを語る。
トヨタ86とスバルBRZが主力のJN3クラスは、今回初めてFRマシンでラリーに参戦する福永修/齊田美早子(トヨタ86)が初日首位。86の走らせ方を探りながら、と語っていた福永は、今回はミシュランタイヤを装着しての参戦。2番手に鈴木尚/山岸典将、3番手に竹内源樹/木村悟士とスバルBRZを2台従えてリードを築いている。
「手探りの部分もあるので、走り方はもうちょっとずつ改善していきたいと思います。ここまできたら勝ちたいので、自分の持てるものを最大限に出していきたいです。でも、タイヤの異なる3台(福永:ミシュラン、鈴木:ダンロップ、竹内:ヨコハマ)がいい勝負になっていることは、良いことですよね」と、福永。
JN4クラスはスズキ・スイフトスポーツやシビック・タイプRが参戦。序盤首位に立っていた西川真太郎/新井正和(スズキ・スイフトスポーツ)はタイヤをバーストさせてしまい後退、代わって高橋悟志/立久井和子(スズキ・スイフトスポーツ)、内藤学武/小藤桂一(スズキ・スイフトスポーツ)がラリーを引っ張るかたちとなった。3番手には古川寛/廣田幸子(スズキ・スイフトスポーツ)がつけている。
2番手の内藤に対して3.8秒のリードを築いている高橋は「タイヤを替えたことが当たりましたね。柔らかいタイヤで1セクション走ったんですが、昼から固めのタイヤにしました。だいぶ盛り返せて、トップで帰ってくることができましたね。この勢いをなんとか明日に繋げたいんですが、逆走なので上りと下りが変わります。イメージもかなり変わりそうですね」と、この日の走りを振り返った。
天野智之/井上由紀子(トヨタ・ヴィッツGR)を大倉聡/豊田耕司(トヨタ・ヴィッツCVT)が追う展開となったJN5クラス。SS1ではトヨタ・ヤリスで参戦した小濱勇希/東駿吾が、新車ながらいきなりクラスベストタイムをマーク。小濱はその後SS3でもクラスベストタイムを刻み、ヤリスのポテンシャルを示してみせた。ラリーをリードする天野は「いい勝負になっていますね。ただ、Tsunotsukiはタイムが出なくて……いまいちパワーが出ていないのかな。Nariaiの方がタイムが出ているんですが、最後のSS6はタイヤの摩耗を気にせず攻めたので、リヤがダメになってしまいました。明日はリヤに新品を入れて、フロントはユーズドで回すつもりです」と、最終日に向けて作戦を語る。新車の小濱は、「SS1でベストを獲れたのがチームにとっても、自分にとっても良かったです。でも、長い距離を走ると、得意不得意がはっきりしてしまいましたね。まだまだポテンシャルを上げるべきところが分かってきて、今後が楽しみなりました」と笑顔を見せた。
JN6クラスは明治慎太郎/里中謙太(トヨタ・ヴィッツ)が序盤から盤石のリードを築き、独走状態に。2番手に全日本初参戦の兼松由奈/美野友紀(トヨタ・ヴィッツ)、3番手にはトヨタ・ヤリスCVTの水原亜利沙/高橋芙悠がつけている。首位の明治は「マシントラブルが出てしまいましたが、ペースを保ちつつなんとかマージンを活かして走り切りたいと思います」とコメント。2番手の兼松は「タイヤやクルマのフィーリングを確認しながら、走りたいですね。クルマがすごくいいので、この良さを発揮できるように集中したいです」と語っている。ヤリスで3番手につけた水原は「クルマが軽いので最初のループはうまく荷重を乗せられませんでしたが、足を柔らかくしたらうまく曲がれるようになりました。明日は上りがメインなので、ヴィッツより軽いので何かできることはあるはずです」と、意気込みをみせた。
レグ2
この日行われたのは計4SS、47.24km。わずかに距離は変わっているが、前日使ったコースを逆走で2度走行する構成だ。午前中には丹後半島を雨雲が通過する予報が出ており、朝のサービスには緊張感が走ったが、結果的に路面をウエットコンディションにするほどの雨が降ることはなかった。JN6クラスは明治慎太郎/里中謙太(トヨタ・ヴィッツCVT)が独走状態だが、それ以外のクラスはすべて接戦(JN1:4.7秒差、JN2:5.3秒差、JN3:1.5秒差、JN4:4.2秒差、JN5:3.7秒差)となっており、最終日のバトルから目が離せない。
JN1クラスは鎌田が4SS中3SSで奴田原のタイムを上まわる快走を見せ、一時はその差を19.1秒にまで拡大。最後までトップの座を譲らずにフィニッシュし、今シーズン初、2019年のセントラルラリー愛知・岐阜以来の優勝を飾ってみせた。このところターマックで好調ぶりを見せる奴田原は、一歩及ばず2位という結果となった。前日まで3番手につけていた新井敏弘/田中直哉はこの日最初のSS7でヒット。エンジンが止まり、リバースとUターンを強いられて、15~20秒のタイムロスを喫してしまう。これで新井大輝が3番手に浮上、その後も順位を守り切って3位表彰台を獲得した。また、初日にリタイアを喫して再出走となっていた勝田範彦/石田裕一は、この日すべてのSSでベストタイムをマークする走りをみせ、レグポイント3点を獲得した。
全日本ラリー選手権としては2018年の開幕戦Rally of Tsumagoi以来の勝利となる鎌田は、「今回は久々のラリーでしたが、スタートから全開で行くことができ、その走りにクルマもついてきてくれました。タイヤもグリップが高かったと思います。最終日最初の1ループ目はアタックしていこうと思っていて、そこで7秒離すことができました。安定してタイムを刻むことができたので、狙ったとおりの展開にすることができたと思います」と、手応えを語っている。
ホンダ・シビック・タイプRユーロvsレクサスRC Fという異種格闘技となったJN2クラスは、シビックの上原淳/漆戸あゆみがSS7/9を、RC Fの石井宏尚/寺田昌弘がSS8/10を獲りあう展開に。総合順位を入れ替えながらの戦いは、最終的には上原が1.1秒差で石井の猛追をしのぎ、ターマックラリーでの初勝利を獲得した。3位には足まわりにトラブルが出て思うようにペースを上げられなかったトヨタ・ヴィッツGRMNの眞貝知志/安藤裕一が入っている。
「1ループ目で離されてしまったので、2位キープかなと思っていましたが、2ループ目最初のSS9で気合いをいれて走りました。そうしたら、期せずして12.4秒も勝ってしまって(笑)。最後も頑張って走りました。次の北海道は完走すれば上に行けると思っているんですが、敵はコロナウイルスですかね」と、上原。僅差で敗れた石井は「2ループ目はだいぶペースを上げたんですが、ちょっと届きませんでした。でも、これだけ真剣に1位を争えたのは初めてだったので、いい経験になりました」と笑顔を見せた。
JN3クラスは、前日3番手につけていたスバルBRZの竹内源樹/木村悟士がSS7で一番時計をマークし、クラス首位の福永修/齊田美早子(トヨタ86)をパス。一方、前日1.5秒差で2番手だった鈴木尚/山岸典将(スバルBRZ)は、この日最初のSS7でリタイアを喫してしまい、戦線離脱の憂き目に遭う。トップに立った竹内は、続くSS8、SS9でもベストタイムを刻んで一気にリードを拡大すると、前戦新城に続くターマックラリー連勝を挙げてみせた。2位は福永、3位は曽根崇仁/竹原静香(トヨタ86)が入った。
逆転勝利を収めた竹内は、「昨日の最終SSからしっかりペースアップできました。今日もしっかりプッシュでき、タイムもついてきました。自分の思っていたラリーの展開を戦うことができて、優勝できました。今後ターマックラウンドには出る予定で、北海道をスキップして、次はモントレーを予定しています。地元ですし、しっかり勝ちにいきたいですね」と力強く語った。
JN4クラスは、オープニングのSS7から内藤学武/小藤桂一(スズキ・スイフトスポーツ)がスパート。連続ベストタイムをマークして先行する高橋悟志/立久井和子(スズキ・スイフトスポーツ)をかわし、午前中のループを終えた段階でクラストップに立った。サービスを挟んだSS9では、高橋が渾身の一番時計。これで高橋が再度トップに立ち、両者3秒差で最終SSヘ。11.35kmの最終SSを、なんとふたり同タイムで走り抜けてみせた。結果3秒差は変わらず、勝利は高橋のものに。3位には古川寛/廣田幸子(スズキ・スイフトスポーツ)が入っている。
高橋は、「接戦でしたね。1ループ目で逆転されてしまいましたが、2ループ目はだいぶタイヤが温まっていたので、ここは行くしかないと、攻めました。次は北海道をスキップして、モントレーに参戦します。序盤から攻められるように、クルマもドライバーも見直す必要がありそうです」と、自らの走りを分析した。一方の内藤は「最後のループで負けてしまって、最終SSで気負ってしまいました。でも、秒差で勝ったり負けたりは楽しいですね。次も勝負できるように精進していきたいです。次の北海道は出たいと思っていますが、あらためて車両のチェックをして、体制がしっかり整っているのか確認してから、考えたいと思います」と次戦への意気込みをみせた。
JN5クラスをリードしていた天野智之/井上裕紀子(トヨタ・ヴィッツGRスポーツ)のマシンに異変が起きたのは、朝のサービス。エンジンが再始動せず、サービスアウトの時間は刻一刻と迫ってくる。なんとか時間ギリギリにエンジンが息を吹き返してことなきを得たが、一抹の不安を抱かせた。ところがラリーが始まってみれば、オーバーヒート症状に悩む大倉聡/豊田耕司(トヨタ・ヴィッツCVT)を尻目に4連続ベストタイムをマークして勝利をモノにした。2位は大倉、3位は今回トヨタ・ヤリスで参戦した小濱勇希/東駿吾が入っている。
天野は「朝のサービスはヒヤヒヤしましたが、なんとか走り出せました。調子もよく、再開初戦で勝ててよかったです。クルマのセッティング的なトラブルもあって大変でしたが、想像以上に大倉選手が速くなっていて、1回のミスでひっくり返されてしまいそうです。なんとか振り切れてよかったです」とコメント。丹後初参戦の大倉は「けっこう頑張ったんですが、負けてしまいました。最後はリスクを負って攻めたんですが、届いていません。エンジンの冷却系が厳しいのかもしれませんね。次の北海道はもう1ステージアップデートが入るので、そこが機能してくれればいいですね」と次戦に期待をつなぐ。3位の小濱は「伸び代があるクルマなので、長所も課題も色々と見つかります。やればやるほど、欠点もどんどん減ってくるはずです。コ・ドライバーの東選手とは初めて組むラリーでしたが、ふたりでテストしたこともあって、一定のスピードが発揮できたので、それが確認できてよかったです」と、ヤリスの手応えを語った。
明治慎太郎/里中謙太(トヨタ・ヴィッツCVT)が大幅リードを築いているJN6クラスだが、マシンに不調を抱えていることもあり完走優先のペースでの走行を余儀なくされる。そんななか、クラス3番手につけていた水原亜利沙/高橋芙悠(トヨタ・ヤリスCVT)がSS7、SS8と連続ベストタイムをマーク。スタート時点で45秒ちかくあった2番手兼松由奈/美野友紀(トヨタ・ヴィッツCVT)との差を一気に3.9秒差にまで詰めてみせた。2ループ目では明治のマシンもペースを取り戻し、2連続ベストタイムでフィニッシュ。今季2勝目を飾ってみせた。2位は兼松、3位は水原。水原は序盤の好走が効き、レグポイント3点を獲得している。
明治は、「今回は最終日の1ループ目でトラブルが出て、それを後半で取り返せませんでした。それでも、完走して勝てたのは良かったです。次はモントレーを予定しています。いろいろテストして、アップデートして挑みたいですね。あらためて、今回ラリーが開催されたことに感謝したいです」と、ラリー開催の喜びを噛みしめた。
(RALLY PLUS)
総合結果
順位 | クラス | ドライバー/コ・ドライバー | 車名 | タイム |
---|---|---|---|---|
1 | JN1-1 | 鎌田卓麻/鈴木裕 | itzz DL SYMS WRX STI | 1:29:00.1 |
2 | JN1-2 | 奴田原文雄/佐藤忠宜 | ADVAN-PIAAランサー | 1:29:17.8 |
3 | JN1-3 | 新井大輝/小坂典嵩 | ADVAN KYB AMS WRX | 1:31:17.1 |
6 | JN2-1 | 上原淳/漆戸あゆみ | メディトランセDLシャフトシビックユーロ | 1:32:59.3 |
8 | JN3-1 | 竹内源樹/木村悟士 | YH CUSCO 大阪冷研 BRZ | 1:33:24.9 |
11 | JN4-1 | 高橋悟志/立久井和子 | ミツバitzzDLマジカル冷機スイフト | 1:33:46.8 |
18 | JN5-1 | 天野智之/井上裕紀子 | 豊田自動織機・DL・ヴィッツ | 1:35:37.8 |
32 | JN6-1 | 明治慎太郎/里中謙太 | G-EYES ADVAN cvt LSDヴィッツ | 1:45:06.2 |
注)クラス区分については全日本ラリー選手権の基礎知識をご覧ください。
参考総合結果表: リザルト(PDF) リザルト(Excel)
ご注意:ここに掲載の本レポートおよび結果表等はJRCA/RALLY PLUSが独自に取材、入手したものでJAF公式発表のものではありません。従ってJRCA以外から発表されるそれらのものと若干異なる場合や誤りのある場合もありますので、あらかじめご了承のうえ参考資料としてご覧ください。