新城ラリー2020 supported by AICELLO
開催日時:3月13日(金)〜15日(日)
開催場所:愛知県新城市
スペシャルステージ本数:10本
スペシャルステージ総距離:87.24km
ラリー総距離:311.42km
SS路面:ターマック
SS路面状況:ウエット/ドライ
ポイント係数:1.0
全日本ラリー選手権第2戦新城ラリー2020 supported by AICELLOは3月15日にすべての競技を終了し、三菱ランサーエボリューションの奴田原文雄/佐藤忠宜が優勝を獲得した。2位には新井敏弘/田中直哉、3位には新井大輝/小坂典嵩のスバルWRX STI勢が入っている。
レグ1
新城ラリーは2020年シーズンの開幕戦Rally Tsumagoiの中止を受けて、実質的な開幕戦に。しかし新型コロナウイルスの感染拡大防止のため観客動員なしでの開催となり、市内で開催されるセレモニアルスタートや企業ブースの出展、飲食店の出店を含めたイベントは中止となる事態となった。選手たちの間に動揺はみられなかったが、静かにシーズンは開幕した。初日は3箇所のSSを2度走行する6SSが設定されていたが、午後のSS4がキャンセルとなり、5SS、34.83kmで争われる。今年からタイヤ本数の規定が変わったため、選手たちはこのラリーを6本のタイヤで走り切らなければならず、その点でも状況に合わせた戦略が求められることとなる。
JN1クラスは、初日の3SSでベストタイムをマークした奴田原/佐藤忠宜がリード。4.6秒差の総合2番手に新井敏弘/田中直哉、19秒差の総合3番手に新井大輝/小坂典嵩(スバルWRX STI)を従える。4番手には柳澤宏至/保井隆宏、5番手に鎌田卓麻/鈴木裕、6番手に徳尾慶太郎/枝光展義という順位だ。優勝候補と目されていた勝田範彦/石田裕一はSS1で駆動系のトラブルによりリタイアとなり、レグ2の再出走でレグポイント獲得を狙う。
首位の奴田原は「気温も低くてなかなかグリップせず大変でした。去年からターマックはセッティングが決まっているのでそれを活かせています。午後は最後、霧が大変でした。路面が乾いてきたので追い上げが厳しいですね。明日はイチから頑張ります」と、2日目の逃げ切り勝利に向けて笑顔でコメントしている。
JN2クラスは、トヨタ・ヴィッツGRMNの眞貝知志/安藤裕一がリード。SS1の中盤でスピンを喫したものの、クラス2番手の石井宏尚/寺田昌弘(レクサスRC F)に1分近い盤石のリードを築いている。クラス3番手は中村英一/大矢啓太(トヨタ・ヴィッツGRMN)。2番手の石井とは12.6秒の差となっており、競技最終日の順位争いに注目が集まる。また、4番手の中平勝也/行徳聡(トヨタGT86 CS-R3)、5番手の山村孝之/井沢幹昌(シトロエンDS3 R3-MAX)、6番手の牧野タイソン/北川紗衣(トヨタGT86 CS-R3)の3台も密集しており、順位変動から目が離せない。トップの眞貝は「午後はかなりコンディションが回復して、急に走りやすくなりました。タイヤをうまく温存できたと思うので、ユーズドとニュータイヤを組み合わせ、もう一度気持ちを入れ直して最終日をスタートします」と、最終日に向け意気込みを語った。
トヨタ86vsスバルBRZの激戦区JN3クラスは、竹内源樹/木村悟士(スバルBRZ)が総合6番手に食い込む好走。クラス2番手には地元の山口清司/大倉瞳(トヨタ86)、3番手はSS6でクラスベストタイムをマークした長﨑雅志/秋田典昭(トヨタ86)がつけている。また、3番手長﨑の1.9秒後方には鈴木尚/山岸典将(スバルBRZ)がつけており、ラリー後半戦の展開も楽しみだ。
「午前中は危ないコンディションでしたが、マシンに問題なく、いいフィーリングでトップを走れています。午後は路面コンディションが良くなりましたが、山口選手とのタイム差があまりないので、明日もしっかり頑張ります」と、首位の竹内。
スズキ・スイフトスポーツのワンメイク状態となっているJN4クラスは、内藤学武/小藤桂一がリード。クラス2番手にはセッティング変更でSS5のベストタイムマークしたを古川寛/大久保叡、クラス3番手にはクルーふたりで16kgにもなるダイエットを敢行して臨んだという西川真太郎/本橋貴司が好走を見せている。内藤は「今日最後のSS6はいいタイムで走れ、明日につながるラリーが戦えたと思います。このイベントのキモは明日の雁峰西だと思うので、ここでしっかりタイムを出せるように、しっかり準備したいと思います」と、翌日に向けて気持ちを新たにコメント。2番手の古川も「車高を変えたことで、クルマがずいぶん走りやすくなりました。やっぱり雁峰西で決まるので、明日に向けて、今夜作戦を練ります」と、やはり雁峰西をポイントとして挙げている。
大会最大の11台がエントリーしたJN5クラスは、天野智之/井上裕紀子(トヨタ・ヴィッツGR)と、今シーズンからJN5にエントリーする大倉聡/豊田耕司(トヨタ・ヴィッツCVT)のチャンピオン同士が首位と2番手で競り合う展開。ふたりはクラス3番手につける岡田孝一/石田一輝(マツダ・デミオ)を1分以上引き離しながら、3.3秒という僅差のバトルを繰り広げている。このクラスではSS1の車両火災やSS2の横転などがあり、後半ゼッケンは2SSをキャンセルしてのスタートとなった。
天野は「SS2でスピンしてしまい、大倉選手に離されてしまいました。一応逆転はできましたがトラブルもあり、思ったよりもタイムは上がりませんでしたね。明日に向けてはアライメントを見直す必要がありそうです」とコメント。追う立場の大倉は「午前中はリスクがかなり高かったので、それをコントロールするので精一杯でした。午後は雨量がだいぶ減ったので走りやすかったですね。SS6の上の方は真っ白でした。明日の雁峰西は完全にドライにはならないと思いますが、そこに焦点を絞って頑張りたいと思います」と語り、明日の雁峰西に照準を合わせる構えだ。
JN6クラスはCVTや電動車が主流となるクラス。首位は明治慎太郎/里中謙太、2番手には田上大輔/鈴木康敬、3番手に水原亜利沙/高橋芙悠と、ヴィッツCVTがトップ3を占めている。4番手にはトヨタ・アクアの海老原孝敬/蔭山恵、5番手に日産ノートe-POWER NISMO Sの永井歩夢/竹下紀子という順位。JN5クラスの後半ゼッケンと同じく午前中の2SSがキャンセルとなっての展開。首位の明治は「まだまだCVTに慣れておらず、走らせ方が特殊なので難しいですね。路面は午後になって、濡れてはいるもののタイムが上がりました。グリップが上がっているんでしょうね。とりあえず1位で戻ってこられて、良かったです」と笑顔でコメントしている。
レグ2
前日とは打って変わって雲ひとつない晴天に恵まれたラリー2日目は、SS7〜SS10の4SS、SS距離46.44km。トリッキーな雁峰西(SS7/9 16.26km)と、ハイスピードなワインディングの鬼久保(SS8/10 6.96km)が舞台だ。なかでも雁峰西は、多くの選手が勝負の行方を左右するSSとして挙げるステージ。朝8時、15分間のサービスを終えた各クルーは、それぞれの戦略を描きながら拠点となる県営新城総合公園をスタートしていった。
JN1クラスは首位の奴田原が快走。この日のSSすべてでベストタイムをマークする速さを見せて初日のリードをさらに拡大、唯一参戦している三菱車の意地を見せてシーズン初勝利をモノにした。オープニングステージとなったSS7の雁峰西は、前日の雨が残ったウエット路面。ここで、新井大輝/小坂典嵩(スバルWRX STI)がハーフスピンを喫しリヤをヒットしてしまう。追う立場として自信を見せていただけに、手痛いミスとなった。その後、鎌田卓麻、新井敏弘、勝田範彦がそれぞれSS2番手タイムをマークするものの、奴田原の勢いを止めることは叶わず、2位に新井敏弘、3位に新井大輝という順でフィニッシュした。柳澤宏至/保井隆宏(スバルWRX STI)はSS9でサスペンションにダメージを負い、大きく遅れを喫してリタイア。代わって鎌田が4位に浮上してラリーを終えた。
シーズン最初の勝利を挙げた奴田原は「とてもいい気分です。今回は雨も降りましたし、タイヤの良さを実感しました。ADVAN A052は温度域が広く、気温の低いウエットでもハマりました。今日もまだ路面が濡れていたなかで、タイヤに勝たせてもらった気がします。舗装に関してはマシンの前後バランスも含めて、すごく良くなってきています。ターマックは勝田選手が速かったですが、去年くらいから場所によっては勝てるようになってきました。このまま次も行けるといいですね」と満面の笑み。「ヌタハララリースクールに来れば、勝ち方を教えます(笑)」と宣伝も忘れなかった。
初日に眞貝知志/安藤裕一(トヨタ・ヴィッツGRMN)が大量リードを築いたJN2クラス。2番手の石井宏尚/寺田昌弘(レクサスRC F)と3番手の中村英一/大矢啓太(トヨタ・ヴィッツGRMN)による12.6秒差の戦いは、石井に軍配。SS7の雁峰西で大柄なRC Fを操り中村との差を1分以上に拡大してみせた。午後のSSになると、4番手の中平勝也/行徳聡(トヨタGT86 CS-R3)が追い上げて中村を逆転し、3位に。中平は全日本ラリー選手権で初の表彰台を獲得した。
快走を見せた勝利を挙げた眞貝は「とてもタフで長く感じました。今回はチームに助けられたからこその勝利だと思います。今年のターマックではタイヤの使用最大本数が6本という規則があるので、2日間とも完璧なタイヤで走る状況はなかなかないでしょうが、今回試行錯誤ができたのは大きかった。次戦の唐津はタイヤに厳しいですが、好きなラリーなので、チームや応援してくれる方々に恩返しができる走りを見せられたらと思います」と笑顔でラリーを振り返った。
JN3クラスは首位の竹内源樹/木村悟士と鈴木尚/山岸典将によるスバルBRZ同士の接戦が見られたが、最終SSを制した竹内が勝利を収めた。この日最初のSS7では前日クラス4番手につけていた鈴木がベストタイムをマークし、クラス2番手に浮上。鈴木はSS7の再走となるSS9でもベストタイムをマークし、クラス首位に躍り出る。鈴木が1.5秒リードする形で最終SSに臨んだが、最終SSでは竹内がきっちりと一番時計で首位を取り返してみせた。3位には、SS8でスピンを喫しながらも、午後のセクションで長﨑雅志/秋田典昭(トヨタ86)を捉えた山口清司/大倉瞳(トヨタ86)がつけた。
勝利を挙げた竹内は「ハラハラするつもりはなかったのですが、SS9で抑えすぎて鈴木選手に逆転されてしまいました。1.5秒差をひっくり返すため、最終SSはかなり気合を入れて走りました。今後もJN3はこのようなタイム差で競り合いになると思います。ワンミスで負けてしまうので、しっかり勝てるように頑張りたいです」とコメント。これまで86勢によるバトルが繰り広げられてきたJN3クラスだが、竹内と鈴木のBRZによる走りにも注目が集まりそうだ。
スズキ・スイフトスポーツによるワンメイク状態のJN4クラスは、内藤学武/小藤桂一と、古川寛/大久保叡によるスクラッチバトルが展開された。オープニングのSS7では古川がベストタイムをマーク。9.3秒あった内藤との差をひっくり返し、さらに7.4秒の差をつけてクラス首位に立つ。続くSS8では内藤が一番時計。内藤の再逆転は叶わなかったが、古川と内藤の差は0.1秒と、緊迫した状態で午後のセクションへ。SS7の再走となるSS9では内藤がきっちりベストタイムでリベンジ。ペースを落としすぎたという古川との差を7.7秒とした。内藤は勢いそのままに最終SS10も制し、自身3度目の全日本ラリー勝利を飾った。3位には西川真太郎/本橋貴司がつけている。
「今日の午前中に1回トップを明け渡して、かなり緊張感のあるラリーになりました」とラリーを振り返る内藤。「午後のループでは、雁峰西を攻めることができ、タイムでアドバンテージを握れたのがうれしいです。順位も含めてすごく良いラリーになりました。路面コンディションが変化するなかで、限界にチャレンジできるように、セットアップが決まっていたのが大きかったです」とのこと。次戦の唐津にもエントリー予定ということなので、手に汗握るバトルがまた見られるはずだ。
天野智之/井上裕紀子(トヨタ・ヴィッツGR)と大倉聡/豊田耕司(トヨタ・ヴィッツCVT)の激突となったJN5クラス。初日を終えた段階で、首位天野と2番手大倉の差は3.3秒。この推移がどうなるかに注目が集まった。SS7では大倉がベストタイムをマークして、天野との差を1.9秒に詰めて見せた。続くSS8は天野が制し、大倉との差を6.2秒に押し戻すことに成功した。サービスを挟んだSS9雁峰西では天野が一番時計。このSSだけで大倉に27.4秒の差をつけ、一気に首位を固めにかかる。そして迎えた最終SSでは大倉がベストタイムを奪うものの、逆転には至らず。28.1秒のリードで天野に軍配が上がることとなった。3位には安定したペースを刻んだ岡田孝一/石田一輝(マツダ・デミオ)が入っている。
天野は「ウエットの雁峰西は難しいですね。スピンしたり色々とあったラリーでしたが、勝てたので良かったです。今シーズンは、タイヤをフレキシブルに選択する必要がありますね。ミスが致命傷になりますし、すべてのSSでベストを狙うよりも、リスクを考えて勝負どころでプッシュするようにしないと、タイヤに厳しそうです。これまでよりも戦略面が重要視されるので、ベテランが有利になるんじゃないかな(笑)」とコメント。次戦以降もふたりによる接戦から目が離せない。
JN6クラスは明治慎太郎/里中謙太(トヨタ・ヴィッツCVT)が前日までに稼いだマージンを活かし、危なげない走りで今季初勝利を獲得した。SS8終了後までクラス2番手につけていた田上大輔/鈴木康敬(トヨタ・ヴィッツCVT)がリタイアとなり、2位には海老原孝敬/蔭山恵(トヨタ・アクア)、3位には水原亜利沙/高橋芙悠(トヨタ・ヴィッツCVT)という結果となった。
首位の明治は「なんとか結果が出せて、ホッとひと安心です。スタートの段階ではドキドキでしたが、次につながる結果が出せたのかなと。まだCVTは試行錯誤で走っている感じですが、意外とよく走るので、これからもっと特性を理解して、さらにアップデートしていければと思っています」と意気込みを語った。
次戦、全日本ラリー選手権第3戦は「Sammy ツール・ド・九州 2020in 唐津」。4月10日〜12日にかけて、佐賀県唐津市を拠点に開催されるターマックラリーだ。路面はタイヤへの攻撃性が高いことで知られ、最大使用本数が6本に制限されたことに対し各ドライバーともどのような戦略で臨むのかが注目のポイントだ。勝つのはここまでターマック連勝を挙げている奴田原文雄か、あるいは唐津12連勝という金字塔を打ち立てた勝田範彦か、はたまた伏兵が登場するのか、興味は尽きない。
(RALLY PLUS)
総合結果
順位 | クラス | ドライバー/コ・ドライバー | 車名 | タイム |
---|---|---|---|---|
1 | JN1-1 | 奴田原文雄/佐藤忠宜 | ADVAN-PIAAランサー | 1:07:36.0 |
2 | JN1-2 | 新井敏弘/田中直哉 | 富士スバル AMS WRX STI | 1:07:58.1 |
3 | JN1-3 | 新井大輝/小坂典嵩 | ADVAN KYB AMS WRX | 1:08:31.7 |
5 | JN4-1 | 内藤学武/小藤桂一 | YH Motys BRIG G4 スイフト | 1:12:31.8 |
6 | JN2-1 | 眞貝知志/安藤裕一 | TGR Vitz GRMN Rally | 1:12:32.5 |
8 | JN3-1 | 竹内源樹/木村悟士 | YH CUSCO 大阪冷研 BRZ | 1:13:22.4 |
15 | JN5-1 | 天野智之/井上裕紀子 | 豊田自動織機・DL・ヴィッツ | 1:14:45.8 |
28 | JN6-1 | 明治慎太郎/里中謙太 | G-EYES ADVAN cvt LSDヴィッツ | 1:19:30.3 |
注)クラス区分については全日本ラリー選手権ガイダンスをご覧ください。
参考総合結果表: リザルト(PDF) リザルト(Excel)
ご注意:ここに掲載の本レポートおよび結果表等はJRCA/RALLY PLUSが独自に取材、入手したものでJAF公式発表のものではありません。従ってJRCA以外から発表されるそれらのものと若干異なる場合や誤りのある場合もありますので、あらかじめご了承のうえ参考資料としてご覧ください。