2018 Sammy ARKラリー・カムイ

開催日時:6月29日(金)〜7月1日(日)
開催場所:北海道ニセコ町、倶知安町、蘭越町
スペシャルステージ本数:11本
スペシャルステージ総距離: 111.59km
ラリー総距離: 425.13km
SS路面:グラベル
SS路面状況:レグ1 ウエット・ドライ/レグ2 ウエット
ポイント係数:1.5

2018年全日本ラリー選手権第6戦「2018 Sammy ARKラリー・カムイ」は、7月1日(日曜日)にすべての競技日程を終え、前日を2番手で終えていた新井敏弘/田中直哉(スバルWRX STI)が首位に浮上し、同じく2位に浮上した勝田範彦/石田裕一(スバルWRX STI)に10.6秒差をつけて勝利を飾った。前日首位の鎌田卓麻/市野諮(スバルWRX STI)が3位に入り、前戦に続いてスバル勢が表彰台を独占した。

レグ1

ここ数年は北海道洞爺湖町を拠点に開催されていたラリーが、今年はホストタウンをニセコ町に移し、大会名も新たに「ラリー・カムイ」としての開催となった。フラットで良質なグラベル林道で構成されるこのラリーは、ドライバーからも走りやすいと高評価を得ている。新たに2カ所の林道ステージが加わった今大会も、中高速コーナーを主体としたフラットなグラベル林道が連続していたが、レッキが行われた金曜日に降った雨の影響が残り、初日午前中は滑りやすいウエットコンディションに。だが、この時期の北海道としては気温が高く、時折晴れ間が見える好天に恵まれたことにより、路面の一部が一気に乾き出すなど不安定な路面状況となった。さらに、雨により一度緩んだ路面は、走行を重ねるごとに深い轍が刻まれ、この轍の影響によりレグ離脱となる選手も少なくなかった。初日は、5.49km、11.24km、5.57kmの3SSを2ループした後、5.49kmのみ3回目を走行する構成で、SS距離50.09kmが設定された。

JN6クラスは、まずはSS1でベストタイムをマークした鎌田が主導権を握るが、SS2では新井がベストタイムで応戦して首位を奪取。すると、SS3ではすぐに鎌田がベストタイムで首位を取り返し、その後はそのまま順位を守り切って、新井に5.1秒差をつけて初日を終えた。
「午後はみんなタイムを上げてきて僅差の争いになったが、後半の2本はけっこうクルマが合っていたし、5.1秒という差はだいたい予定どおり。明日は勝負どころとなる20km超のSSがあるので、そこに向けて舗装の走り方も考えていきたい」と、鎌田は笑顔を見せた。選手権リーダーの新井は、先頭ゼッケンのため砂利掃きの影響もあってか、やや苦戦。さらに勝田範彦/石田裕一(スバルWRX STI)は、新井から14.7秒差と大きく間を空けられた。29.3秒差の4番手には奴田原文雄/佐藤忠宜(三菱ランサーエボリューションX)、5番手の柳澤は、この日最後のSSでスタート直後にパンクしてタイムロス。奴田原から37.9秒差と、かなり厳しい状況だ。

JN5クラスは、トップの小濱勇希/馬場雄一(シトロエンDS3 R3-MAX)に7.8秒差で川名賢/保井隆宏(シトロエンDS3 R3 MAX)、さらに17.7秒差で横嶋良/木村裕介(プジョー208 R2)が続くかたちとなっている。SS1ではベストタイムをマークした川名はSS4まではクラストップをキープ。しかし、ターボのブースト圧が低下したりヒーターホースが抜けるなどのトラブルに見舞われ、最終SSで小濱の逆転を許した。小濱は「路面が乾いてきたのでグリップが上がり、好きなコンディションになってきたのでペースが上がった。明日はこのままの勢いを維持したいが、長いステージがあるので油断ができない。根比べのサバイバルラリーとなっているので、明日もしっかりと走り切りたい」と決意を表した。

JN4クラスは、SS1から前戦勝者の上原淳/漆戸あゆみ(ホンダ・シビック・タイプRユーロ)が首位に立つと、この日7本のSS中6本のSSでベストタイムを獲得し、関根正人/草加浩平(スズキ・スイフトスポーツ)に19.1秒差をつけてのクラストップで、初日を折り返した。「最後の2本はフカフカだった。轍が深く掘れて線路みたいになっていたので、オンザレールを心掛け大人の走りをしました(笑)。明日はロングステージが2本あって、20秒くらいは簡単にひっくり返されてしまうので頑張りたいですね」と上原。3番手には、関根から26.0秒差で山口清司/山本磨美(トヨタ86)が追っている。

JN3クラスは、SS1、SS2で天野智之/井上裕紀子(トヨタ・ヴィッツ)がベストタイムを連取するも、SS3でブレーキロックが原因でエンストして8秒ほどタイムロス。ここで2番手の大倉聡/豊田耕司(トヨタ・ヴィッツCVT)が天野との差を4.6秒詰めてくるが、その後はペースを取り戻した天野が大倉との差を25.9秒に広げ、初日を終えている。3番手には、大倉から25.3秒差で地元北海道の松倉拓郎/猿川仁(マツダ・デミオ)が続いている。「頑張っているが、大倉選手も速くて思ったほど差がつかない。レグ1では最低でも30秒は差がほしいと思っていたが、予想よりもタイム差がつかなかったので明日もしっかり攻めないといけなくなりました。明日は雨の可能性もあるが、22kmのSSは舗装区間もかなりあるので、タイヤをどうするか考えどころですね」と天野は2日目に向けて気を引き締めた。

JN2クラスは、長﨑雅志/秋田典昭と明治慎太郎/北田稔とのトヨタ86同士の一騎打ちとなった。前半はSS1、SS2で長﨑が、SS3、SS4で明治がトップタイムと、激しい攻防を展開。サービスを挟んだ後も、明治が1本、長﨑が2本と両者一歩も譲らない好バトルを見せて、この日を終えて首位長﨑と2番手明治とは3.7秒と僅差だ。「午前中にマージンを作ったが、SS5でスピンしてしまった。それでもタイム的には明治選手といったりきたりでいい勝負ができている」と長﨑が語れば、明治も「長いSSで少し追いつけたので勝負にはなってきたと思うが、勝ったり負けたり。明日は走り切れるスピードで勝てればいいなと思っている」と両者にらみ合いの状態だ。

JN1クラスは、序盤、須藤浩志/新井正和(スズキ・スイフトスポーツ)がトップタイムを連取し首位でサービスを迎えるが、リヤ周りの調子がよくないと今ひとつペースをつかみきれない。一方で、午後のセクションからペースを上げてきた古川寛/廣田幸子(スズキ・スイフトスポーツ)が徐々に須藤との差を詰めると、この日最後のSSでクラストップタイムをマークし、ここで須藤を逆転。初日を首位で折り返すが、須藤との差は3.5秒となっており、明日の展開に注目が集まる。「少しずつクルマに馴染んできたので、明日は22.19kmのSSが2回あるし、何とか今回勝たねばと思っている。最近守りに入っているので、スイッチを自分の中で入れていきたい」と気合いを見せる。3番手の三苫和義/遠藤彰(ホンダ・フィット)も、須藤から33.5秒差と奮闘している。

レグ2

この日はORCHID (22.91km)とKNOLL(7.84km)の2SSを2ループする構成。今大会最長となるORCHIDは、舗装区間の距離も長く、今回最大の山場と見られているステージ。この日のラリーエリアは朝から雨に見舞われウエットコンディションとなった上に、柔らかいグラベル路面は雨に濡れた泥が覆い、リタイアが続出するサバイバル戦となった。

JN6クラスは、前日を首位鎌田に5.1秒差で終えていた新井が、この日最初のSS8で鎌田を5.8秒先行する2番手タイムを叩き出し、この時点で首位に浮上。すると続くSS9でもステージウインを連取し、一気に後続を引き離しにかかる。しかし、タイム的には好調に見える新井も「ORCHIDは中途半端な走りをしては全然ダメ。危なくて心が折れそうになった。もう1本のKNOLLはフカフカで、2ループ目は轍が掘れてしまうんじゃないかな。残り2本のSSはセッティングがどうのこうのではなく、心の持ちよう」と警戒を見せる。その言葉通り、このSS9では、鎌田が石に引っかけてパンク。30秒以上をロスし、ここで優勝争いからは脱落してしまった。替わって2番手に上がった勝田範彦/石田裕一(スバルWRX STI)は、2ループ目のORCHIDも1ループ目と同じくベストタイムをマーク。一方の新井も4.7秒差のセカンドベストでペースをコントロールすると、最終SSでは再びステージウインを重ね、2位の勝田に10.6秒差を付け優勝を飾った。逆転優勝を飾った新井は「(鎌田)卓麻も(勝田)ノリも速いので、前みたいに簡単に勝てないなと思った。すべてを全開で走らないと勝てない。同じ走りをしても、速いところと遅いところの差が出てくるので、クルマのセッティング面でもその辺りを何とかしないと。でも、3連勝で、後がラクになるね」とタイトルに向けての手応えを語った。

JN5クラスは午後のセクションから波乱の展開となり、前日をトップで折り返した小濱勇希/馬場雄一(シトロエンDS3 R3T MAX)がSS10でコースアウトしてリタイアするという番狂わせが発生する。また、2番手を走行していた川名賢/保井隆宏(シトロエンDS3 R3 MAX)もこのSSでスタックし、4分以上タイムをロス。さらに最終SSでサスペンションを破損してリタイアしてしまう。結果的に、SS10でトップに浮上し、最終的にはクラス唯一の完走を果たした横嶋良/木村裕介(プジョー208 R2)が逆転優勝となった。「午後は、昨日からモヤモヤしていたことが分かってきました。次戦(いわき)までテストする時間があるので、しっかり対策して、福島は序盤戦からライバルにプレッシャーをかけられるように頑張っていきたいと思います。まだまだR2のポテンシャルを発揮できていない部分があるので、次戦でもポテンシャルを発揮できるよう頑張りたいと思います」と満足を見せた。

JN4クラスは、前日首位の上原淳/漆戸あゆみ(ホンダ・シビック type Rユーロ)がこの日最初のステージをベストタイムでまとめて2番手関根正人/草加浩平(スズキ・スイフトスポーツ)との差を25.7秒に広げると、その後はペースをコントロール。11.1秒のギャップを残して、クラス優勝を飾った。クラス2位は、この日2本のステージでベストタイムを奪った関根が入賞。この日最初のSSで3番手に浮上していた山本悠太/北川紗衣(トヨタ86)が、そのままポジションを守り切って表彰台に上がった。前戦に続いての2連勝となる上原は、「1ループ目のステージはだいたい勝つことができたので、2ループ目を抑えていくことができました。最後の2本は大人の走りだと自分で自分をほめたいです(笑)。この勢いで、ラリー北海道までいきたいですね」とベテランの貫録を覗かせた。

JN3クラスは、SS8のロングステージで前日首位の天野智之/井上裕紀子(トヨタ・ヴィッツ)がベストタイムをマークするが、続くSS9では「(ウエット)タイヤがこのステージに当たった」という大倉聡/豊田耕司(トヨタ・ヴィッツCVT)が天野に7.6秒差をつける奮闘を見せてくらいつくが、この時点で天野との差は43.6秒差。残る2SSは天野がステージウインを連取し、最終的に大倉との差を1分40秒に広げて優勝を飾った。初日3番手の松倉拓郎/猿川仁(マツダ・デミオ)は、前日からのポジションをキープして3位に入賞。天野は「思った以上に大倉選手が速かったことと、自分のミスもあって思うようにタイム差がつけられなかった。特にKNOLLはタイムが拮抗。3速と2速のシフトチェンジが多いので、シフトチェンがないCVTの有利さも出ているのだと思う。去年も同じような傾向が出ていた」と状況を分析した。

長﨑雅志/秋田典昭(トヨタ86)と明治慎太郎/北田稔(トヨタ86)の一騎打ちとなっていたJN2クラス。3.7秒の僅差でこの日を迎えたが、この日のオープニングステージとなるSS8で明治がコースオフしてリタイアとなり、その後は長﨑のひとり旅となった。優勝の長﨑は、「SS8の途中で明治選手が止まっているのがみえたので、そこからは完走ペースに切り替えて、完走を目標に置きました。初めて全日本に挑むシーズンなので、その中でもクルマと相談しながらいろいろな走り方など試し、今後の糧になるよう勉強しながら走りました。初日をトップで終えて明治選手にプレッシャーになった点が勝利に繋がったと思います」とラリーを振り返った。

激戦となったJN1クラスは、この日最初のステージとなるSS8で前日首位の古川寛/廣田幸子(スズキ・スイフトスポーツ)が、初日2番手の須藤浩志/新井正和(スズキ・スイフトスポーツ)に7.1秒差をつけるベストタイムを叩き出すと、続くSS9でも11.2秒差をつけて、初日は3.5秒だった須藤との差を21.8秒に広げる。「2日目は走り方を変えた」という須藤は、「当たっていなかったみたい。走りを変えたことで勝敗が付いてしまった感じ」と、ここでポジションキープ宣言。結局、残る2SSも古川がステージウインを重ね、28.7秒差をつけてクラス優勝を火ざっら。2位は須藤、3位には、前日4番手から追い上げた小川剛/藤田めぐみ(ホンダ・フィット)が食い込んだ。

(RALLY PLUS)

総合結果

順位 クラス ドライバー/コ・ドライバー 車名 タイム
1 JN6-1 新井敏弘/田中直哉 富士スバル AMS WRX STI 1:22:20.8
2 JN6-2 勝田範彦/石田裕一 ラックSTI 名古屋スバル DL WRX 1:22:31.4
3 JN6-3 鎌田卓麻/市野諮 itzz DL SYMS WRX STI 1:23:16.6
10 JN5-1 横嶋良/木村祐介 DUNLOP CUSCO プジョー R2 1:31:41.3
11 JN4-1 上原淳/漆戸あゆみ DL・KTEC・シャフト・シビックタイプRユーロ 1:31:50.6
13 JN3-1 天野智之/井上裕紀子 豊田自動織機・DL・ヴィッツ 1:33:20.4
15 JN1-1 古川寛/廣田幸子 スマッシュitzzインディゴDLスイフト 1:34:04.1
28 JN2-1 長崎雅史/秋田典昭 名古屋トヨペット NAVUL 86 1:38:13.3

注)クラス区分については全日本ラリー選手権ガイダンスをご覧ください。

参考総合結果表: リザルト(PDF) リザルト(Excel)

ご注意:ここに掲載の本レポートおよび結果表等はJRCA/RALLY PLUSが独自に取材、入手したものでJAF公式発表のものではありません。従ってJRCA以外から発表されるそれらのものと若干異なる場合や誤りのある場合もありますので、あらかじめご了承のうえ参考資料としてご覧ください。

ダイジェスト動画

2018年 全日本ラリー選手権 第6戦 カムイ

イベントフォト

JN6クラス優勝 新井敏弘/田中直哉

JN5クラス優勝 横嶋良/木村裕介

JN4クラス優勝 上原淳/漆戸あゆみ

JN3クラス優勝 天野智之/井上裕紀⼦

JN2クラス優勝 長﨑雅志/秋田典昭

JN1クラス優勝 古川寛/廣田幸子